【再質問状に対する教育委員会からの回答】
若宮を守る会が送付した再質問状に対して平成30年2月7日に名古屋市教育委員会より文書による回答がありましたので、お知らせします。
【再質問状を出すに至った経緯】
「若宮を守る会|若宮商業高校の存続を求める有志の会」は平成29年11月26日に若宮商業高校で開催された閉校提案説明会に向けて、事前に質問状を提出いたしました。その後、説明会時に教育委員会から口頭でご回答いただきましたが、質問に対応していない/不十分に見える回答が見受けられましたので、該当部分を指摘の上、再質問させていただくこととなりました。
平成29年12月20日付けで若宮商業高校同窓会会長代行(若宮を守る会呼びかけ人)酒井伯明が河村たかし市長と杉﨑正美教育長あてに「魅力ある市立高等学校づくり推進基本計画(第2次)(案)の若宮商業高等学校閉校計画に関する質問について(再質問)」を送付しています(回答期限平成30年1月19日)。
【守る会からの質問と教育委員会の回答について】
1.「閉校提案理由について(少子化)」
若宮商業高校は、開校から現在まで55年間に渡って、毎年定員を上回る志望者がいる学校です。その若宮商業の閉校理由の一つに「少子化」を挙げておられますが、名古屋市内の少子化はこの15年間ほど下げ止まっており、むしろ出生人数は微増しています。区別に見ても減少は見られず、若宮商業高校の志望者が多い緑区・天白区ではむしろ出生人数は増加傾向にあります。
再質問①
名古屋市のオープンデータ等を見るに、出生数はこの十年で微増、社会増もこの十五年ほどで増加傾向です。仮に今後、より長期的に名古屋市の少子化が起こるとしても、「今」閉校提案を出されることには疑問があります。そこで、説明会の回答にある「推計値」と、その根拠となった「データ」をご開示ください。参考:名古屋市HP、日本の地域別将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所発表)
回答
推計値は平成22年度国勢調査のデータを基に、転入や転出については平成12年度から平成22年度の状況を踏まえたコーホート要因法により教育委員会が作成しております。また、名古屋市の人口推計も同じように算定しております。(※ 別紙参照)
再質問②
若宮商業には、(名古屋市内で最も人口が多く、再開発で今後も人口増が見込まれている)緑区出身の生徒が最も多く在籍しています。そのような地域特性への考慮が不十分なまま「少子化」を挙げることは妥当性に欠けると考えますが、どう思われますか。
回答
統計なごやWeb版により、出産の対象としている女性の数など、市内全体の人口推移を見た場合、生徒数が今後減少していくという大きな流れは変わらないと考えております。
2.閉校提案理由について(商業科ニーズの低下)
若宮商業の閉校理由のもう一つとして「商業科のニーズの低下」を挙げ、その証左として「名古屋市立高校の他学科と比べて、志望者/第一志望者が少ない」ことを示すグラフを提示されていますが、これはきわめて断片的な見方であると言わざるを得ません。
まず「商業科のニーズ」と一口に言っても、さまざまな側面が挙げられ、
A「受け入れ側(中学生志望者、保護者、中学校)のニーズ」
…前述の通り、定員割れを起こしたことはありません。今年度の中学3年生の第一回進路希望調査でも、第一希望だけで今年度定員(240人)を23人上回っています。
B「送り出し側(求人・採用企業)のニーズ」
…過去2年間で、求人数が575から980と、1.7倍以上増加しています。また今年度の高3生の就職試験内定率は、84.1%(10/11現在)と、過去10年で最高値でした。
C「地域特有のニーズ」
…「モノづくり県」愛知は事業所数・従業員数でともに全国3位であり、即戦力となる商業科高校生へのニーズは他の都道府県と比べても高いと考えられます。また、名古屋南部の通学圏の中学生や通勤圏の企業に対して若宮商業は、名古屋南部唯一の商業高校です。
といったように、各種ニーズの大きさを表すデータも指摘することができます。
また、なぜ検討データが「名古屋市立高校の他学科との比較」だけなのでしょうか。現在、愛知県下に商業高校は11校ありますし、名古屋市内にも若宮商業を含め5校あります。それら商業高校内で若宮商業は、「志望者数・倍率」「求人数、内定率」「商業実務総合競技大会結果」「魅力ある高校づくりの取り組み」等のいずれにおいても、閉校対象となるような瑕疵はないはずです。若宮商業が定員割れを起こしたことがないことは前述の通りです。
再質問③
B「送り出し側(求人・採用企業)のニーズ」と、C「地域特有のニーズ」について、回答ではまったく触れられていませんが、企業や地域のニーズを考慮に入れない理由をお示しください。
回答
平成27年12月に実施した企業向けアンケートの結果も参考にしながら、今回の計画(案)を作成しております。
再質問④
定員割れを一度もしたことがない若宮商業を、(愛知県下に11校、うち名古屋市内に5校ある公立商業高校の中から)真っ先に閉校とせざるを得ないほどの理由が、回答からは直接うかがえません。若宮商業を閉校とせざるを得ない「理由」および「メリット」を、具体的にお示しください。
回答
生徒数の減少に対し、これまでは各校の学級数の削減で対応してきましたが、学校の小規模化が今後さらに進み子どもたちの教育活動に支障をきたすことが想定する中、学校数を減らすという対応をしていく必要が生じています。
近年、商業科ニーズが低い状況にあることに鑑み、さらには、商業高校としての歴史や伝統、学校規模や施設の築年数などを総合的に検討した結果、若宮商業高校を再編対象校としております。
再編にあたっては、これまでの商業科を改革し、新たなニーズに対応した学校を作っていく必要があると考えています。また、施設の老朽化や保有資産量の適正化等といった課題もあり、市立高校全体で魅力ある学校づくりを推進できると考えております。
3.次年度の学級減について および 計画の発表およびその進め方について
9月の保護者向け説明会時に、保護者の方から、「若宮閉校ではなく、名古屋市立高校全体での学級減で対応する案はなかったのか」と質問があった折、教育委員会より「高等学校には適正規模(6~8クラス)があるので学級減で対応はできない」といった旨の回答があったとのことです。それなのに、11月9日発表の来年度の高校生徒募集計画によると、若宮商業は1学級減の「5クラス」募集となるようです。閉校提案が出されている中、適正規模を下回ることとなる次年度の学級減については、疑念や憶測を抱かざるを得ません。
閉校提案の内容もさることながら、唐突な計画の発表およびその進め方については、8月末の教育こども委員会上での全会派による批判に始まり、二転三転(「いったん立ち止まって議論する」とした翌日の「撤回ではない」発言)、その後の沈黙、膠着状態のまま今に至っており、中学校でも進路指導が十分にできず、困惑していると聞いています。この現状の放置に対しては、不信の念を抱かずにいられません。「立ち止まって議論する」のならば、(市長の発言にもあった通り)ゼロベースからの相談から、白紙の状態から始めるのが筋ではないでしょうか。また、若宮商業を志望する中学生、その保護者、中学校や、若宮商業に求人を下さる企業の間に広がっている困惑に対して、早期に対処すべきではないでしょうか。
再質問⑤
閉校提案時は、「年内にパブリックコメントを実施した上で判断し、正式決定」と発表されていましたが、実際には有識者会議が年をまたいで開催されることからも、予定通りの日程でないことは明らかです。速やかに、計画をひとたび撤回する旨の声明を出し、風評被害を未然に防いでいただきたいと希望します。(そうでない限り「しっかりと説明」などできないでしょうし、「広く意見を求め」ても有力な意見は集まらないでしょう。)そこで、閉校提案をいったん撤回した上で有識者会議を持つことは、市長の「ゼロベースからの相談」という趣旨にも沿い、また風評被害の予防にもつながると考えますが、これについてどう思われますか。
回答
「魅力ある市立高等学校づくり推進基本計画(第2次)」の提案内容を前提として、有識者による懇談会でさまざまな観点から意見を伺い、それを踏まえて教育委員会で議論を進めることとしております。
4.有識者による懇談会について
11月22日に有識者から意見を聞く懇談会が公開(傍聴可)で開かれることが、11月10日に発表されました。保護者向け説明会上の保護者要望を受けての開催と推察します。ただ、「会の出席者の、賛成派/反対派のバランスがきちんと保たれているかどうか」、「答申や審議を行う機関としての位置づけでなく、『懇談』の会ということで、はたして十分な議論が保障されるかどうか、提出意見が尊重されるかどうか」等、懸念もあります。
再質問⑥
(説明会の場でも疑義が出た通り、)懇談会が「十分に説明し、議論を尽くした」という、いわゆるアリバイ作りの場となってしまうことを危惧します。なお、現在のところ、メンバーに若宮商業関係者が入っていませんが、若宮の教員・PTA・同窓会の代表が懇談会メンバーに入っていない理由をお示しください。
回答
今回の懇談会は市立高校全体の再編について意見を伺うこととしており、高校のPTAからも代表者の方に出席していただいております。
また、若宮商業高校のPTA・同窓会の代表の方には第3回の懇談会に参加いただくなど、今後もお話をする機会を持ちたいと考えております。
再質問⑦
懇談会の議事録は、公開されるのでしょうか。また、予定では懇談会は3回開催されるとのことですが、議論の内容によっては3回で終わらずに、さらに継続して話し合いを行う可能性はありますか。
回答
会議の内容に関する情報提供はさせていただいている所であります。また、懇談会の回数につきましては、話し合いの状況によると考えております。
5.名古屋市整備・財政面について
名古屋市の「市設建築物再編整備の方針」では、「『縮充』の精神で再編整備に取り組む」とあり、「保有資産量の10%削減」が掲げられています。8月26日の新聞報道でも、関係者の話として「老朽化による維持費を抑えるため、2050年度末までに市の学校施設を19~24%削減する対策を進めることなどが閉校の理由」として挙げられていました。しかし、9月の保護者向け説明会でも保護者から財政面と閉校提案の関連性について質問が上がったり、「他の市立高校の整備・充実のために若宮をつぶすのか」との声が上がったりしたにもかかわらず、教育委員会からは財政面についての詳細な説明はありませんでした。
再質問⑧
財政担当部局からの具体的な要請や、財政プランの提示はありませんでしたか。ありましたら、その概要をお示しください。
回答
本市の「市設建築物再編整備方針」(平成27年9月策定)も踏まえながら検討を進めております。
再質問⑨
説明会時の「若宮閉校のメリットは何か」という質問に対して、「ハコ(学校施設)が1つ減るとコストが減る。ICT,学習指導要領への対応などに(予算を)使っていく。」という率直なご回答がありました。限られた教育予算の中で、学校運営計画の難しさゆえと推察しますが、やはり「公教育/学校のリストラ」は回避されるべきではないでしょうか。そこで、今回の閉校提案の背景には、いわば「学校のリストラ」の論理がある訳ですが、公教育の場に、子どもたちが現に学び、過ごしている場所に、そのような論理で事にあたるのは不適切ではありませんか。また、今後も名古屋市立幼稚園・保育園・小・中・高校で「学校のリストラ」を続けていく計画はあるのでしょうか。 ※上記質問七に同じ。
回答
将来的な生徒数の減少及び学科に関する生徒ニーズの変化を踏まえた市立高等学校の再編や、安心・安全で快適な教育環境を確保していくための施設整備を行っていく必要があると考えております。
また、「学びのあり方」の改革やグローバル社会における人材育成などの国の動向を見据えながら、パイロット校の設置やグローバル・エデュケーション・センターの開設をもとに教育の振興を図り、さらなる市立高等学校の魅力づくりに繋げていくことも計画の柱にしております。
以上が再質問・回答となります。再質問状とその回答についてはHPの反対の論点・公開質問状・各種ビラのページでも掲載いたします。
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